Story

蒼白い横顔で、まっすぐに背筋を伸ばして座っていた彼女。かたくなに言葉を拒む彼女を、初めはどう思ったのだったか。その瞬間から彼女に惹かれていたのだとしたら、それは何にもまさる引力だ――。

惹莉(わかり)の母が莉菜(りな)の父親と再婚したのは、莉菜の母親の葬儀の翌日のことだった。父親の愛人の息子である惹莉を、莉菜ははじめ、受け容れようとしない。しかし、ある出来事をきっかけに、莉菜は惹莉に心を許すようになる。徐々に近付くふたりの距離。「仲の良い、半分だけの姉弟」でいられたのなら、そのまま日々は穏やかに過ぎてゆくはずだった。けれど惹莉は莉菜に惹かれてゆくことを止められない。抗うことのできない血の渦は、惹莉と莉菜を、そして周囲の人々をも呑み込み、肥大してゆく。


characters

垣 惹莉(かき・わかり)
父親は将司、母親は満子。莉菜とは4つ違いの半分だけの姉弟。11歳の時に莉菜と出逢う。当初は莉菜に反感を覚えるが、次第に変化してゆく。極度に人見知りで、頑固。

垣 莉菜(かき・りな)
父親は将司、母親は美晴。惹莉よりも4つ年上の半分だけの姉。15歳の時に惹莉と出逢う。幸助とは高校に入る年に出逢った。基本的に明るく人当たりも良いが、心を許すことはめったにない。本質的にはわがままで自由奔放、頑固。

原瀬 幸助(はらせ・こうすけ)
莉菜よりも一つ年上で、同じ高校の先輩。千灯路の隣人で、千灯路と仲が良かった。穏やかで年下に慕われる性格。きわめて普通の高校生だったが、莉菜と出逢ったことで徐々に変わっていく。

倉橋 春希(くらはし・かずき)
惹莉の初めてにして唯一の友人。何かと惹莉を気遣う。明るく友人も多い反面、惹莉の莉菜への想いにいち早く気付くなど、聡明で大人びた一面も持つ。

井上 千灯路(いのうえ・ちひろ)
莉菜の母・美晴の年の離れた妹。莉菜とは12歳違い。仕事一筋。社交的で快活、面倒見も良い性格。姉・美晴にはかなり懐いていたため、将司にはあまり良い印象を抱いていない。

垣 美晴(かき・みはる)[旧:井上]
莉菜の母親であり、将司の先妻。莉菜が15歳の時に病死。惹莉の存在は将司から聞いて知っていた。

垣 将司(かき・まさし)
莉菜と惹莉の父親。満子とは不倫の関係にあった。ただし惹莉を認知してはいない。頑固で気難しく、時に理不尽。

垣 満子(かき・みつこ)[旧:蓮実]
惹莉の母親。将司よりも10歳年下。美晴の葬儀の翌日に将司と入籍。気弱だがしたたかで打算的。惹莉のことはあまり気にかけていない。


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【long story】
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