Cu roon


「高木君、結婚おめでとう。すぐ別れないようにしろよ?」
「別れませんよ。福田さん」
別れないように、なんて言ってるがすぐ別れろって思ってる。
高木君の事が好きなのは俺なのに、って思ってる。
「福田さーん。どうしたんですか?」
「あぁ、少し考え事をな。ネーム見ようか。」
「いつも見てもらってありがとうございます」
「大丈夫だよ。高木君の話は面白いし、特に絵が…ね、つい笑っちゃうな」
この答えも本当だが、高木君に会いたいからというのが真実だ。
ハハハ…、高木君は苦笑いした。
ネームを読んでるとピンポーンと、インターホンが鳴った。
「ねー秋人さん?いるー?」
「ああ香耶ちゃん、今開けるなー」
いつもの出来事かのように喋っている二人を見てつい苛立ってしまう。
大人ならば隠さなければいけない、と思っても苛立ちを隠すことができない。
「…ダメだ。」
えっ?と高木君が驚いている。
でもそれ以上に、俺自身が驚いた。
心の中で思うことは多かったが口に出して言った事は無かった。
「いや、なんでもない。ちょっと考え事をな…」
俺はここにいたくない一心で、
「奥さんが来るなんて俺は邪魔者だよなーじゃ、また今度来るわ」
と言い足早にその場を去った。

雪道を歩く俺の目には水、水。
水が溢れる。
自分でもここまで悲しいものなのか、と思う。
大の大人が、と思う。
それでも、水は止まらなくて。
…今までも悲しくなることはあった。
しかし、ちゃんとしたつながりではなく「雰囲気」だけだったからそこまでではなかった。
だけど今度は「結婚」。ちゃんとしたつながりだ。


―――もうどうしたらいいか分かんねえよ。
俺の目にはさらに水が溜まった。

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